【ウェビナー実録】フリーランスと企業の理想と現実

会社に所属せず、仕事に応じて自由に契約するフリーランス。

今でこそフリーランス活用は当たり前のように選択肢として認識されていますが、実際にフリーランスと一緒に取り組みをされている企業はまだまだ多いとは言えない状況です。

「フリーランスの相場ってどれくらいなの?」「一般的な企業から見て、フリーランスってどう思われているの?」など普段あまり人に聞けないこともありますよね。

そこで今回は「フリーランスと企業の理想と現実」と題して、現在のフリーランスの実情や、企業のフリーランスに対する印象、相場についての考え方、一般的なフリーランスと、デジタルマーケティングのフリーランスの違いなどを紹介します。
※2020年12月10日に実施したウェビナーのダイジェスト記事になります。

〈3人の紹介〉
・松谷さん
→株式会社ブレーンスタイル代表取締役。フリーランスと共に、企業のデジタルマーケティング領域の業務支援を行う。

・八田さん
→株式会社レイロ。2019年に独立し、スタートアップのブランディングを支援。その後、法人化しフリーランスと共同でブランドを作る事業を開始。過去、メーカー2社に所属しマーケティングやデザインの担当経験あり。

・穂刈さん
→フリーランス株式会社。5000人が所属する日本最大級のフリーランスコミュニティー「FreelanceNow」を運営。

現在のフリーランス全体の実情

松谷:「現在のフリーランス全体の実情は、どんな感じなんですか?」

穂刈:「ざっくり言うと二極化している印象があります。いろんな人が欲しがる能力、企業からみて明らかに必要な能力を持っている方、例えば、新言語のアプリ開発など、できる人が限られているものに関しては、引く手あまたで、報酬は上がる一方です。野球選手でいうフリーエージェント選手みたいなものですね。それに対して、誰にでもできるようなこと、例えば、誰でも回答できるアンケートなどはどうしてもライバルが増えてくるので、価格の落し合いになって、結果、金額が落ちてしまう傾向がありますかね。」

松谷:「フリーエージェントタイプって結構、稼いでる方いらっしゃるんですか?」

穂刈:「そうですね。複数の選択肢があった時に報酬で選べる状態で、ある意味、競りのような状態なのでどうしても報酬が上がりやすい傾向にあるかなと思います。」

企業のフリーランスに対する印象

松谷:「企業は今、フリーランスの方をどう見ているんですかね?」

八田:「私の主観にはなるんですが、明るくなってきているイメージではあります。私の場合は2社、メーカーでデザインやマーケティングに関わらせていただいていたんですが、社内にはデザインの部隊、マーケティングの部隊もいて、フリーランサーを使う必要性がないっていうケースも多かったんです。社内デザイナーの知見でいくと、どうしても社内の文化に影響されてきます。そこでフリーランサーのアイデアを求めるケースは実際にありました。企業が求めているのは、社内文化に影響されていないトーン&マナーです。そこの条件が合致すれば、どんどんフリーランスの手を借りようとしている企業は多いです。」

松谷:「今までデザイナーさんなどのいわゆるクリエイティブ職にはフリーの人が多い印象だったんですけど、マーケ系でもフリーの人が増えてきている印象が強いです。フリーの人は皆さん、ご自身の専門を持っていて、あれもこれもできるというよりはなにかに特化してる印象です。お金に関していうと、デジタルマーケティングってまだあんまり相場ができていないと思うんですけど、意外と皆さん、同じような金額を出してきて、金額が合わないとお断りっていう、安売りしない方が多いです。【私はこういう仕事をこのぐらいで受けたい】という自分の軸を持っている方が多いっていうのはすごく感じています。あとは、コロナで一気にWeb上で仕事ができるようになったのでフリーランスの方にとっては仕事がしやすくなったんじゃないかなと思います。デジタルの業務は、新しいものを取り入れる動きがあるので、そこが他の職種と違うところだと思います。」

八田:「発注側がフリーランスに求めることは、切り出しやすさ社内にないスキルです。この2点を抑えているフリーランスは、大きな発注を取ったり、成功しているなという印象です。少なくとも、ウィズコロナの状態では企業は社内に新しいリソースを抱えることに前向きではありません。その観点から、フリーランスにとっては追い風と言えるんじゃないかと思います。」

フリーランスの仕事相場についての考え方

松谷:「フリーランスの方が仕事を受ける時の相場ってどれくらいなんですか?」

穂刈:「結局は、相手の予算次第です。提示された予算の中でこちらはどれくらいのことができるのか、どんな価値を与えられるのかということをしっかり話すことが大事だと思います。」

八田:「僕は、値引きは基本的にはバツだと思ってます。相場を気にしないで、【自分はこういうことをこのくらいの金額でやれます】っていうのをしっかりとした意思を持って伝えることが大切だと思います。安請け合いばかりしていると、自分の価値も下がってしまうし、他の人の相場も下げてしまうことになるという考え方なので、逆に相場を意識しすぎるのはあまりよくないのかなと思いますね。」

穂刈:「僕自身も、フリーランス株式会社で、フリーランスへ発注する側なんですが、こちらが提示している予算、もしくはあちらから出している受注金額を超える価値を提供してくれる人に、継続してお仕事を依頼する形になります。その金額以下の価値だと感じてしまったら、その人に発注することはおそらく二度とないですかね。」

松谷:「そういうところで二極化していく感じなんですかね。」

穂刈:「企業側からすると、フリーランスってたくさんいて選ぶのが大変なんです。だからそこ、最初の信用を勝ち取るのが大切です。例えば、最初が安い金額でちょっとやる気が出ないなんてこともあると思うんですけど、ものすごくいいものを納品してもらえれば、これからも継続してその人に頼みたくなるので、とにかく最初の信用が大切です。実績が広く拡充されているなどの担保がない限りは、最初から金額を上げることは不可能だと思います。」

八田:「企業側がフリーランスに求めるメリットは、固定費がかからないとか自社の持ってないリソース、例えばデザイナーだったら自社にないトーン&マナーとかです。逆にデメリットとしては、エンゲージメントの部分があるのかなと思います。フリーランスとの仕事では、今まで取ってきたコミュニケーションが蓄積していきません。そのため企業側には、社内のリソースじゃなくなるっていう怖さがあると思います。」

穂刈:「企業は不確実なものに高額の投資はできません。フリーランスは、どうしても便利屋的な立ち位置になってしまいます。その上でフリーランスがどう価値提供していくかとなると、やっぱり相手が求めている価値以上のものを提供し続けるしかないんです。そのために、しっかり相手の話を聞くであったりとか、話を聞いた上で、自分から提案してみるとか積極的なアプローチが大切になってきます。」

フリーランスは人一倍コミュニケーションを取るべき

松谷:「フリーランスならではの仕事のやりづらさってあったりしますか?」

八田:「社内にいたときに比べて、意思決定がしっかり見えないことがあって戸惑いました。」

穂刈:「企業側としては、期待以上の提案をしていただけるかどうかがすべて。ご予算以上。本当にシンプルにそれに限ると思います。僕らが発注するときもそうなんですけど、発注意図をわかってくれない人って多いんです。フリーランスの方は、意外とコミュニケーションを取れていない人が多いです。」

八田:「おっしゃるとおり、アウトプットの質であったり、期待値以上っていうのもそうですし、レスの早さも求められるような気はします。弊社でもエンジニアさんと一緒に仕事することが多いんですが、技術というよりはそこに対するレスの早さであったり、質問してくれたり、明確に返事が返ってくることが大切だと思います。何やってるかわからないって思われた時点で負けみたいなところはあるので、信頼関係を作っていく上でレスの早さは意識するといいと思いました。」

穂刈:「フリーランスに仕事を依頼している時って、内部の社員とかって急いでる印象があるんですね。なので、本当に即レスが基本だと思います。1時間も2時間も返事がないと今度は別のフリーランスに声かけているんですよね。」

松谷:「レスは全く同感です。レスが早い人には、お仕事いっぱいご案内してると思うんですけど、そうじゃない方にはなかなかお声がけしづらいっていうのは正直あります。」

一般的なフリーランスとデジタルマーケティングのフリーランスの違い

仕事をどう獲得してくるのか

松谷:「一般的なフリーランスとデジタルマーケティングのフリーランスの違いって何があると思いますか?」

穂刈:「シンプルに個人的にはないと思います。【私がこういうことをやることによって御社にこういったメリットがありますよ】と提案するのは、エンジニア、デザイナー、ライターもデジタルマーケティングも同じです。1ついうと、紹介で仕事が決まることは多いと思います。フリーランス白書を見ても5割が友人の紹介だったりします。報酬が高額であることが多いので、担保として誰かの紹介っていうのは、ある意味大事なのかなと思います。」

松谷:「リファーラルみたいなことですよね。」

穂刈:「今まではイベントに参加してフリーランスの友達を作るのが主流だったと思うんですけど、コロナ禍になってからは、色んなサービスに登録して、自分の仕事のきっかけづくりを積極的にしている人が多い印象です。デジタルマーケティングはエンジニアなどとは違って比較的知られていない職業です。エンジニアがホームページを作るっていうのは、皆さんホームページを良く見られているので想像しやすいですよね。それに対して、マーケティングを活用していない会社だったら、そもそもマーケティングとはなにか、デジタルマーケティングとの違いはなにかなど事細かに説明しないと話が進んでいかないので、そこに違いはあるのかなと思います。」

八田:「私自身、メーカーのマーケターとして働いた経験と、独立してからの経験を振り返ってみると、相手の思っているマーケティングって僕が思っているマーケティングと違うなと思ったことがあったんです。相手の指すマーケティングがデジタルマーケティングなのか、PRよりなのかきちんとすり合わせをしておかないと、見当違いな回答をしてしまうこともあったので、気をつけないといけないし、相手の周辺知識を得る必要はあるかなと思います。」

掛け持ちで請け負える会社は何社くらいか

松谷:「最大で何社くらい掛け持ちしているか、知ってますか?」

穂刈:「僕のリアルな友達であれば最大7社、友人の友人になると10社なんて人もいます。」

松谷:「10社なんて回せるんですか?」

穂刈:「ディレクターとかであれば問題ないですよ。」

松谷:「僕も10社以上の人、会ったことありますけど、本当に1人、2人くらいです。平均的にはどのくらいなんですかね。」

穂刈:「5社くらいのイメージですかね。というもの1社だと価格の交渉で不利になりやすいです。どういった形でもいいので少なくても4、5社くらい入っておくと1番条件が悪いところだけ変えて行くみたいなこともできるのでリスクヘッジにもなります。」

松谷:「エンジニアで週5の仕事とかやっている方いらっしゃるじゃないですか。その場合って空いてる期間とかできてしまうんですか?」

穂刈:「できますね。アプリとかホームページとか作る時はどうしても後ろ1ヶ月、余裕もたせたりすると思うんですけど、作成しながらも、次に仕事は取りに行っていると思います。」

松谷:「じゃあやりながら次の仕事を。」

穂刈:「やりながら間を空けないようにしているはずです。もしくは1ヶ月といいながら同時並行で作業に入っていることもあります。」

フリーランスを活用する企業は多いのか?

八田:「私の経験にはなってしまいますが、メーカーなどは割と古い体質の会社が多いので、基本的にはフリーランスを使っていないところが多いのかなと思います。ただ、デジタルマーケティングの領域だと、外のDX(デジタルトランスフォーメーション)会社の執行組を構えて、そこから社内のチームを作っていくみたいなところはあると思います。」

穂刈:「弊社でFreelanceNow経由で参加されている福島香里さんは、弊社の営業から経理、広告、ディレクター、秘書業務まで担当しています。福島さんだけで7社以上のやりとりをしているんです。すごいのは、どんどん距離を縮めてきてくれたり、こちらのかゆい所をうまく提案してくれたり。結局は信頼関係の積み重ね次第かなと思います。」

副業解禁で大きく変わろうとしているフリーランスの「働き方」

松谷:「副業が解禁されてきて、複数の会社で副業をやっている方もいらっしゃいますよね。今はまだ副業で働いている方がそんなに多くないと思いますが、今後副業が進み、本当に仕事が回るようになったら、正社員とフリーランスの差がなくなる気もします。そんなことって起こりうると思いますか?」

八田:「起こりうるのではないですかね。雇用形態については書面だけの差で少なくともがちがちに区分けされる未来はないと思います。今後、正社員とフリーランスの差は曖昧になっていくと思うので、それこそ信頼関係が大切になってくると感じます。」

松谷:「将来的に、社員とフリーランスの中間的な立ち位置やフリーランスがもっと突っ込んで働けるような環境になってくるのかなという気はしています。フリーランスという言葉に代わる言葉が出てきたら、もっと新しい働き方が生まれそうですね。」

穂刈:「その中で誰にアプローチしていくべきかというと、個人的にはライバルがいない所で戦うべきだなと思います。例えば、ライターが100人いる中で1番になるよりも、ライターが1人もいないところで1番で入っていく。もちろん、ライターを使ったことがないところには、ライティング技術よりも、ライターを使うことのメリットをしっかり説明することで、自分が筆頭のライターになる道が作れます。」

まとめ:フリーランスは求められる価値以上のものを提供し続けることが大切

企業がフリーランスに求めていることは、「期待以上の価値」を提供し続けることです。

期待以上の価値を提供するには、スキルよりも、相手の話を聞いて自分のスキルがどんな風に役立つのかコミュニケーションを取ることが大切になってきます。

フリーランスは、スキルの切り売りになりやすいです。相手から求められたもので自分ができるものをただ納品していくので多少の経験値は積めてもそれ以上のことをできるようにはなりません。

ときには、チャレンジングですが、少しできるかわからないこと仕事をやってみることも経験として大事になってくるでしょう。

当たり前のことですが、一緒に仕事したいと思ってもらえることが大切です。

結局は人と人の関係なので、お金に関しても、自分が提供してる価値に相手が満足しているかしていないかのバランスを見極めることが重要になってきます。フリーランスには、その判断のためのセンスや感覚が必要になるでしょう。

常に情報収集を怠らず、自らのスキルを磨いていくという姿勢も大事になります。ただ、全て自分に返ってくるものなので、投資と考え継続的に行う姿勢がある方が活躍している印象があります。