デジタルトランスフォーメーション(DX:Digital Transformation)という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
デジタルテクノロジーの進化により、新しい製品やサービス、ビジネスモデルが誕生してきている中で、注目されている言葉です。
感染症拡大にともないテレワーク化が推進されており、DXを意識した業務形態の必要性が増しています。
デジタルトランスフォーメーション(DX)の定義について
デジタルトランスフォーメーション(DX:Digital Transformation)は、直訳すると「デジタル変換」となります。ただ、実際は変換よりも、「変革」の意味合いが強いです。
これは、デジタルテクノロジーの進化により、新たな製品やサービス、ビジネスモデルを展開し、コスト削減を実現し、働き方改革や社会そのものを変革させる施策を総称したものです。「デジタルを使った変革」と言っても良いでしょう。
しかし、どのようにこの言葉は生まれたのでしょうか。まずデジタルトランスフォーメーションの誕生について解説します。
デジタルトランスフォーメーションの誕生について
デジタルトランスフォーメーションは、2004年に当時スウェーデンのウメオ大学教授だったリック・ストルターマンによって提唱された概念です。
それは「進化し続けるテクノロジーが、人々の生活を豊かにしていく」というものでした。
これはどのようなことを言っているのでしょうか?
補足すると、以下2点です。
・これまでの価値観を根底から覆すような革新的なイノベーションをもたらすもの
リック・ストルターマンは、情報技術と社会、情報システムの設計、設計の哲学、および技術の哲学の研究をしています。
そして、最大の関心は「進行している社会におけるデジタルトランスフォーメーションの全体的な影響」です。そのため、テクノロジーをより良い社会に活かすには、批判的な研究も必要であるとも言っています。
デジタルトランスフォーメーションのもともとの意味合いは、社会や人類全体に関わる、広いテーマとして生まれた概念です。
近年におけるデジタルトランスフォーメーションの意味合い
近年では、一般的に「最新のデジタル技術を駆使し、デジタル化時代に対応するための企業の変革」という意味合いのビジネス用語として使われています。
デジタルテクノロジーの進化により、産業構造が大きく変化し、新しい競争が生まれます。これをチャンスと捉えるスタートアップもあれば、脅威と捉える企業もあるでしょう。
そのためデジタル化に対して、どの企業も対応をしていくべきという示唆が根幹にあります
とくに脅威と捉える企業にとっては、ビジネスモデルの変更や組織転換を見直す必要があるかもしれません。
一方でスタートアップやベンチャー企業にとっては、デジタル化を駆使することで、大きな利益を手に入れることが出来るかもしれません。
それぐらいデジタル化は、全ての企業に対して影響を及ぼします。
対応するには、ITシステムの最適化が不可欠です。そのためには既存システムの維持管理だけではなく、長期的に見た戦略的なIT投資を行うことが重要です。
まだまだ現行システムの維持管理に資金投資が行われている企業が多いので、長期的な視点を持つことが課題となっています。
DXと略される理由
デジタルトランスフォーメーションの英語表記は「Digital Transformation」です。
だから頭文字を取れば、「DT」と略されてもいいはず。
しかし、デジタルトランスフォーメーションは「DX」と略されます。
これは、「Trans」を「X」と略すことが一般的な英語圏の表記に準じていることが理由です。
経済産業省や各調査会社の資料でも、DXという略語が登場するので覚えておいてください。
経済産業省が定義したデジタルトランスフォーメーション(DX)
それでは日本の取り組みはどうでしょうか。2018年12月に経済産業省が、「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」を発表しました。
ここでのデジタルトランスフォーメーションの定義は以下の通りです。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
参照:デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(経済産業省)
上記の定義からデジタルトランスフォーメーションは、製品やサービスを変革するだけではなく、企業文化や風土まで変えてでも、変化の激しい環境に対応するために取り組むべきものと言えます。
しかし取り組んだ結果、企業が潰れてしまったら意味がありません。そこで、取り組むことで安定した利益を上げられることを付け加えると良いかもしれません。
2025年の崖とは何か
経済産業省は2018年9月に「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」という報告書をまとめています。
企業が生き残るための鍵は、デジタルトランスフォーメーションの実践と、2025年までには既存システムを刷新する必要性を主張する内容です。
そして、現在のシステムは、老朽化・ブラックボックス化が進んでいると指摘しています。
これでは新しい事業展開への対応ができない、保守・運用のためのコストがかさむといった問題が生じるため、デジタルトランスフォーメーションが進まない要因になってしまいます。
この問題を2025年までに解決しないと、日本経済に年間で最大12兆円(現在の約3倍)の損失が生じる可能性があるともレポートされています。具体的な数字が出ているので、大きな衝撃を与えました。
これが「2025年の崖」と呼ばれる現象です。2025年はそう遠くない未来です。なので、どの企業にとっても避けられない問題が立ちはだかっています。
デジタルトランスフォーメーション(DX)の事例
それでは、デジタルトランスフォーメーションの事例にはどのようなものがあるでしょうか。
具体的な事例として、下記企業の取り組みを紹介します。
・Uber
・Netflix
・トヨタ自動車
・コマツ
・三菱電機
それぞれ見てみましょう。
Amazon
Amazonが巨大なECサイトを構築したことは、人々対して「店舗に足を運んで買い物をする」という概念を変えました。
それは「オンラインで買い物をできる」というもので、どこにいても何でも好きなものが買えるという環境を私たちは得ることをできたのです。
つまり「足を運ぶ」というアナログ的な行動を、デジタルに置き換えることに成功したと言えるでしょう。
ユーザーの利便性も高く、購入した商品と似たようなものを紹介するレコメンデーション機能やワンクリックでの購入など、新しい仕組みも取り入れていますね。
そしてユーザーの購入履歴をはじめとした行動履歴は、ビッグデータとして保管。AIによる分析を行うことで、次の予測を立てることに利用し、販売に活かしています。
Uber
日本ではタクシー配車アプリと認識されているUber。しかしもともとはライドウェアサービスです。車を運転した人と乗りたい人をマッチングします。
従来のタクシーは車を多数保有し、ドライバーを雇用してサービスを提供していました。しかしUberでは、自分たちでは自動車も運転手も所有しないで、スマホアプリによる新しい移動サービスを構築したのです。
アプリで全て完結するので、ドライバーとの連絡や位置情報も把握できます。到着時間も見込めるし、費用もアプリから電子決済できるので、とても楽です。
Netflix
Netflixもデジタルトランスフォーメーションの事例と言って良いでしょう。これまでのレンタルビデオ・ DVDは、1作品ごとにレンタル料金を支払うヒジネスモデルでした。しかしNetflixは「毎月の定額支払いでコンテンツを配信」という新しいビジネスモデルを構築しました。
Amazonと同じく、レコメンデーション機能があるので、これまで見たコンテンツからおすすめの作品を紹介してくれます。これもユーザーデータを蓄積しているからできることでしょう。
またユーザーデータを分析し、視聴されやすいであろう作品も自分たちで制作しています。
トヨタ自動車
若い人の自動車購入が少なくなってきており、これまでの自動車販売だけでは苦しくなってきています。そんな中、トヨタ自動車は「毎月定額払いで乗り放題」というサービスを展開し、「移動する」という体験そのものを提供するビジネスモデルを構築しました。
サブスクリプション型のビジネスを自動車会社が展開するとは興味深いです。
またトヨタ自動車は、自社向けに自動運転ソフトウェアの開発で、AI技術を活用する開発も積極的に行っています。
コマツ
建設機械を製造・販売している小松製作所。建設機械の自動化とオペレーションの最適化の実現を、成長戦略の一つとしています。ここには建設業界の労働力不足が背景にあるようです。
既存の建設機械に、センサーやアンテナ、それらを制御するコントローラーなどを後付けできるキットを販売し、データを取得できるようにしました。そしてジャイロや加速度の計測、位置情報の取得が可能となり、情報通信技術(ICT)を活かした施工を実現したのです。
キットにはさらに追加機能を搭載できるように、開発を進めていることも発表されています。
三菱電機
三菱電機では「e-F@ctory」というコンセプト。機器同士をネットワークでつなぎ、取得したデータを分析・活用することで、工場最適化の実現を支援しています。
製造業向けに工場自動化(FA)に関わる部品やソリューションを提供している同社は、自動化に関するノウハウを蓄積していました。
ノウハウを最大限駆使し、モノのインターネットと呼ばれるIoTの技術をベースに、デジタルトランスフォーメーションによるソリューションを提供しているのです。
加工機械にセンサーを設置し、遠隔で機械の状態診断や、加工状況の確認など、スマート工場と呼ばれる情報管理効率化や、運営最適化を図る工場を実現しています。
デジタルマーケティングとデジタルトランスフォーメーション(DX)の関連性
デジタルマーケティングとは、デジタルで得られるデータや技術を活用したマーケティング手法です。
デジタルマーケティングについて詳しく解説した記事はこちらになります。
一方で、デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、最新のデジタル技術を駆使し、デジタル化時代に対応するための企業の変革を指しています。
企業において、円滑にデジタルマーケティングを実践するためには、組織の体制として、デジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みが進んでいる必要があります。
ビジネスや生活のデジタル化が進み、顧客の購買行動が変わったことで、マーケティングを含むデジタル化の対応が遅れている企業は、存続が難しくなりつつあります。
事例で挙げたNetflixの様なインターネット動画配信サービスの台頭により、かっては9,000店舗以上展開していたビデオ・DVDのレンタルチェーン店の「ブロックバスター」は2010年に倒産手続きの申請をしました。
デジタルマーケティングやデジタルトランスフォーメーション(DX)に対応できるか否かは、企業の存続に関わるということが理解できる事例です。
以上の様な背景から、デジタルマーケティング、デジタルトランスフォーメーション(DX)は注目を集めているのです。
まとめ
今回は、デジタルトランスフォーメーションについて解説しました。これから企業がさらに成長をしていくためには、デジタルトランスフォーメーションは欠かせません。
実際に取り組んでいる企業もありますし、成功事例もいくつもあります。
社会環境の変化にともない、デジタルトランスフォーメーションによる自社ビジネスモデルの変革や、新しい方向性が求められています。簡単ではありませんが、どの企業も無視できない重要な問題です。