パラレルキャリアとは?マーケターのキャリアの築き方

正社員や契約社員、そしてパートなどの雇用形態だけではなく、リモート勤務など働き方そのものが多様化してきました。
そんななか、ひとつのキャリアにこだわらない「パラレルキャリア」への注目が高まってきています。

しかしパラレルキャリアとは実際にどのような働き方なのか、副業とはどう違うのかよく分からないでいる方も多いのではないでしょうか。

本稿では、近年注目を浴びている「パラレルキャリア」の概要とメリット、そしてマーケターがパラレルキャリアを築くうえでの注意点などを解説していきます。

パラレルキャリアとは

「パラレルキャリア」とは、今世紀を代表する経済学者といわれるドラッカーが、著書「明日を支配するものー21世紀のマネジメント革命」のなかで使用した言葉です。
「本業を持ちながら、第二のキャリアを築くこと」とドラッカーが定義したパラレルキャリアは、日本では「複業」と訳されています。

「複業」と似た言葉に「副業」がありますが、「複業」自分のスキルアップや夢をかなえるなど「自分の可能性を発揮すること」を目的としているのに対し、「副業」「本業とは別の収入を得ること」を目的としている点が大きく異なります。

なぜ今パラレルキャリアが注目されているのか?

ドラッカーが「明日を支配するものー21世紀のマネジメント革命」でパラレルキャリアを提唱した1999年の日本では、パラレルキャリアはそれほど注目されませんでした。

当時の日本では終身雇用制度が当然とされていたため、パラレルキャリアに対する理解が進みませんでした。
しかし、この20年で日本人の平均寿命は伸び続けています。

厚生労働省のまとめによると、2018年の日本人の平均寿命は女性が87.32歳、男性が81.25歳とあります。
着実に人生100年時代に近づきつつあります。一方で、企業の平均寿命は約30年と言われています。

参照:平成30年簡易生命表の概況(厚生労働省)

私たちは自身の寿命が企業の寿命よりも長い時代に生きています。
かつての終身雇用制度は終わりを告げ、私たちは複数の仕事を平行してこなしたり、ある仕事から異なる仕事へとシフトする働き方が当たり前の時代に生きなければいけなくなりました。

厚生労働省は平成30年1月に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を作成しました。
それまで、厚生労働省の「モデル就業規則」には、「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと。」という副業・兼業に否定的な文言がありましたが、ガイドラインの作成を契機に上記の文言を削除しました。

参照:副業・兼業(厚生労働省)

本ガイドラインの公布後に、副業を解禁する企業が増えつつあります。少子高齢化による働き手の不足、70歳まで働く機会の確保を企業の努力義務とする「改正 高年齢者雇用安定法」の成立により、私たちの働き方を取り巻く環境には大きな変化が見られます。

不確定な時代に自身の身を守る働き方として、パラレルキャリアは注目されています。
企業側も労働者が社内では得られない知識・スキルを獲得することができるメリットがあると認め、副業を奨励する傾向が生じ始めました。

さらにコロナウィルスによる社会の混乱を契機に、「企業任せではなく自らキャリアを主体的に作りたい」と考える個人が多く現れ、パラレルキャリアの市場が大いに盛り上がりつつあります。

パラレルキャリアのメリット

パラレルキャリアにはどのようなメリットがあるのか、6つ紹介していきます。

①自分の夢を実現できる

例えば、学生時代教師を目指していたけれども、今はまったく別の職に就いているような場合、本業が休みの週末に、近所の子どもを集めて勉強を見るボランティアを行うのもパラレルキャリアのひとつの形です。
他にも学生時代にずっと続けていた野球を、今度は子どもの野球チームのボランティアコーチとして続けていく人もいるでしょう。

このように一度はあきらめてしまった夢を、別の形で実現できるのが、パラレルキャリアの魅力です。

②起業や副業の下準備として役立てる

新卒で大企業に就職してしまえば年功序列で毎年給料が上がり、定年まで安定して働き続けられる終身雇用制度は崩壊しつつあります。
大企業の経営破綻が連日報じられるなか、いつ雇用が打ち切られても良いいように、企業や副業の下準備としてパラレルキャリアを始める人も増えてきました。

将来突然仕事がなくなったとき、いきなりフリーランスで身を立てるのは難しく、長い準備期間が必要です。
本業とは別に、将来的に収入を得られる自分の適職を模索するときに、パラレルキャリアは有効です。

③得意分野を確立できる

パラレルキャリアは、スキルアップや自己実現を目的としているため、自ずと自分の好きなことや興味のあることを選択するものです。
好きなことを続けているうちに、どんどんその分野についての知識がつき、やがて得意分野として確立していきます。

例えば、元々プログラミングに興味を持って勉強をし、自分のサイトなどを作っているような場合、「わたしのお店のサイトも作ってほしい」と頼まれることがあるかもしれません。
得意分野として確立すれば、将来の選択肢が増えることにもつながります。

④本業へのモチベーション維持や向上につながる

正社員として毎日会社に出勤し、同じメンバーで仕事をしているような場合、慣れた仕事がすっかりルーチン化してしまいつまらなく思うこともあるでしょう。

そのような場合でも、終業後やお休みの日にパラレルキャリアでまったく別の活動をしていれば、ストレス発散や気分転換が可能です。
そうすることで本業にも新たな気持ちで取り組めるようになるなど、モチベーションの維持や向上につながります。

⑤人脈が広がる

パラレルキャリアで本業とは別の活動をしていると、これまでになかった人脈が広がっていく場合があります。
今まで接点のなかった職種の人と知り合うことがあれば、新たな視点で本業を見つめるきっかけになるかもしれません。

またパラレルキャリアに関するサイトなどを介して、職種はおろか国籍や年齢を問わず人脈が広がる可能性もあります。
新しい出会いがあることで、さらに別の道が見えてくることもあるでしょう。

⑥自分の力を知ったり自分を見つめたりすることができる

本業が忙しく、日々仕事に追われていると、なかなか自分をゆっくり見つめ直すことができません
パラレルキャリアを考えることは、自分が本当にやりたいこと、また自分にできることは何なのかを、改めて考えることにもつながります。

そして実際にパラレルキャリアでさまざまな活動を行うことで、これからどう生きていきたいのか、自分の今後の人生について考えていくこともできるでしょう。

パラレルキャリアを築く上で注意すべきポイント

自分の人生にプラスになることが多いパラレルキャリアですが、築いていくときに注意するべき点を5つ紹介していきます。

①自身が興味のある仕事が何か分からない

パラレルキャリアに興味があっても始められない理由として、「自分が興味のある仕事が何なのか分からない」と答える人が多いようです。
パラレルキャリアは、副収入を目的とする副業と異なり、その道を究めなくてはと最初から重く考える必要はありません

自分の人生にプラスに作用させ、精神的な豊かさのために行うのがパラレルキャリアなので、純粋に自分が好きなこと、得意なことを始めれば良いのです。
経済的な安定は本業が支えているため、もしやってみたことが向いていなければ、別の何かを試してみるとよいでしょう。

②時間に余裕がなくなる

パラレルキャリアを始めると、時間に余裕がなくなってしまうことが考えられます。
週末をフルにパラレルキャリアの活動に充ててしまうと、本業と合わせて休みがなくなってしまうこともあるでしょう。

その結果、本業に支障を来すようなことがあっては本末転倒です。パラレルキャリアを築いていくときには、平日数日の夜間だけ、あるいは週末土日のどちらかだけなど、無理のない範囲で始めることがお薦めです。

③費用が発生する場合がある

パラレルキャリアの内容によっては、費用が発生することもあるでしょう。
たとえば新たにプログラミングを勉強するための教材やスクールに投資する、毎週決まった場所に通うために交通費が発生するなどさまざまなケースが考えられます。

パラレルキャリアでは基本的に報酬が発生しないため、費用についてはすべて自分の負担になります。
報酬が発生しなくても、パラレルキャリアを築いていくことで得るものへの対価、また自分への投資と考えるようにしましょう。

④継続が難しい

パラレルキャリアはモチベーションの維持が難しく、継続できない人も多くいます
理由としては時間がない、あるいは本業や副業と異なり報酬が発生しない場合が多いなどが考えられます。

パラレルキャリアは、無理せず続けることが何よりも大切です。時間が無い場合には、すきま時間を利用するなどして、できる範囲でコツコツ積み重ねていきましょう。

また楽しめなくなったときには一旦辞めて、またできるときに始められることがパラレルキャリアの良いところであることも、忘れないようにしてください。

⑤企業の規則違反に当たる可能性がある

パラレルキャリアを続けているうちに、報酬が発生する仕事を依頼されることがあります。
自分が築いてきたパラレルキャリアが認められ、モチベーションが上がる瞬間ですが、場合によっては副業とみなされ会社から罰則を受ける可能性があるため注意が必要です。

またまったく報酬が発生していなくても、パラレルキャリアの活動自体が副業と誤解される可能性があります。
近年副業を認める会社も増えてきていますが、もしそうでない場合にはパラレルキャリアを始める段階で、説明しておいたほうがよいかもしれません。

マーケターにもパラレルキャリアが求められる時代に

それでは現在本業でマーケターとして働いている場合、パラレルキャリアはどう考えればよいのでしょうか。

マーケティングの業務は、商品の企画から市場調査、プロモーションや分析など多岐に渡ることが特徴です。
パラレルキャリアでマーケティングとはまったく異なる分野のことを始めたとしても、そこで得た知識や人脈が、本業に役立つことは多いと考えられます。

しかし市場において自分の価値を高めようと考えるのであれば、今行っている業務のなかから特に好きなこと、得意なことを選んだうえで、さらにスキルを磨いていくことがお薦めです。

広告デザインが好きであれば自分で広告が作れるほどにデザインを学ぶ、あるいは実際に自分でサイトを運用し、SEOを実践するなどすれば、スキルアップにつながるとともに、本業での評価を高めることもできるでしょう。

自分のスキルを磨き、マーケターとして働くモチベーションを上げるためにも、積極的にパラレルキャリアを築いていってみてください。

まとめ

大企業の正社員になることが正であった時代は終わり、働き方や雇用形態は多様化しています。ひとつのキャリアにこだわらず、複数のキャリアを形成することは、今後の社会を生き抜いていくうえでは強い武器になるかもしれません。

パラレルキャリアにはいくつか注意点もありますが、得るメリットは大きなものがあります。これからの自分の人生をより豊かにしていくためにも、パラレルキャリアを視野に入れたうえで、今後のキャリアを築いていくことを考えてみてはいかがでしょうか。