最近、東大生の就職先ランキングで、上位10社中6社がコンサルティングファームというニュースを目にしました。
(参考:https://www.moneypost.jp/1319553)
実際に、周囲にもこの春就職した学生が多くいますが、確かにそのほとんどがコンサルに進んでいて、「本当にコンサルって人気なんだな」と肌で感じます。
なぜここまでコンサルが人気なのでしょうか?
記事では、年収だけでなく「誰かの役に立ちたい」という若者の価値観にフィットしている点が要因として挙げられていました。
その他にも、数年後の転職に有利、早期に成長できる、ブランド力がある、といった理由もあるようです。
たしかに、「忙しいけれど成長できる環境」として、20代のキャリアスタートに最適と考える学生が多いのは理解できます。ただ、気になるのは“外資系コンサル”の一択感です。
こう言うと保守的に聞こえるかもしれませんが、国立大学で税金を投じて育てた優秀な人材が、こぞって外資系企業に就職するという構図は、やはり日本の経済にとっては健全とは言い難いと思います。
もちろん、本人にとっての最適な選択であることは否定しません。ですが、仮に日本の上位層が全員「個人としての最適解」だけを追い求めてしまうと、社会としての再配分や成長のバランスが崩れていく。
明治期に創設された国立大学の成り立ちを思い出すと、本来は「国家を支える人材を育成する」ことがその使命だったはずです。
そうした歴史的な背景を持つ機関が、今や外資系企業への優秀な人材供給源になっている。この現状には、正直モヤモヤするものがあります。
なぜ日本企業や国内の産業が“選ばれなくなっている”のでしょうか。そこには、構造的な課題がいくつもあると思います。
給与や働き方の柔軟性、キャリア形成の透明性、仕事の社会的意義——
どれをとっても、若い人にとって「魅力的に見えない」のだとしたら、これはもう単なるブランディングの問題ではありません。社会や企業の側が、「選ばれる側」になる努力を怠ってきた結果とも言えるでしょう。
では、どんな仕事なら“選ばれる”のか。私は、「デジタル領域」の業務だと思っています。これは弊社の事業領域でもあるのですが、デジタルはこれからの日本にとって、経済的にも社会的にも最もポテンシャルのあるフィールドです。
ただ、ここにも課題はあります。日本の企業で、デジタル領域で世界に通用するようなプレイヤーがどれほどあるか。日本の産業界の課題として、「デジタル赤字」があげられますが、デジタル関連産業も現状は外資に独占されています。
ちょっと前はGAFA、最近ではAI関連のプロダクトが注目を集めていますが、残念ながらそこに日本発の企業やサービスはほとんど見当たりません。技術も、人材も、社会的課題も揃っているのに、「打席に立っていない」印象さえあるのです。
若者がコンサルに行くこと自体は悪いことではありません。問題なのは、それ以外の選択肢が圧倒的に少ないこと。
優秀な人材が「ここで働きたい」「この領域を変えたい」と思えるような国内の仕事・会社・業界が、もっと多く存在するべきです。
そして、それをつくるのは、今の大人たちの役割だと思っています。
魅力ある会社を、業界を、日本の中に増やしていくこと。
それが、次の世代に残せる本当のレガシーではないでしょうか。